自然界にももともとあるという議論のまやかしには気をつけたほうがいい。
しきい値とがまん量
この量を越えなければ害がでないという「量」がありますが、それをしきい値(閾値)といいます。
放射線影響の分野では、皮ふの紅斑、脱毛、不妊などには、しきい値が存在しています。
また、ガンや遺伝障害をもたらす量についてはしきい値は、ありません。
そこで、限界線量(線量限度、許容量)をどう決めるかが問題になりますが、社会的なメリットとデメリットを考えて、この程度はがまんできるという量の上限という考え方、つまり限界線量は「がまん量」という考え方と、「これ以上はがまんできない量の下限」という考え方があります。
限界線量以下だから安全とよくいわれるが、そういう意味の数字でないことは明らかです。
がまん量も、誰がどのような状況で、がまんするのかという問題もあります。医療でX線を浴びるとして、その被曝から予想される害よりも、X線で検査
したために重大な病気が早く見つかる可能性のほうがメリットがあるとすると、
その被曝は、我慢できるということになります。
だが、原子力発電所の近くに住んでいる人たちにとっては、もし事故が起きて
放射線を浴びるとすると、いくらそれが限界線量以下であったとしても、それは自分ががまんするのではなく、がまんさせられるという意味になってしまいます。
一般人の限界線量は1mSv/年、職業人(原子力関係の仕事、放射線を扱う仕事に就いている人)は、5年平均で20mSv/年(100mSv/5年)とされています。
体外被曝(外部被曝)と体内被曝(内部被曝)
体外の放射線源による被曝を体外被曝(外部被曝)という。
外部被曝なら、遮蔽物をおく(例えば、α線(アルファ線)なら名刺の厚さの紙でほぼ遮蔽できる)、放射線源に近づかない、どうしても接するときはできるだけ短い時間でという対策をとることができます。
一方、体内に入ってしまった放射線源は、こうした対策がとれません。
そればかりかα線なども大量に浴びてしまいます。
α線の実体は、ヘリウム原子核なので身体への打撃は甚大です。
それに元素によっては、体の中の特定の器官に集まることがあります。
例えばヨウ素131は甲状腺に、ストロンチウム90は骨にという具合です。
放射能は弱くても、この部位が集中して放射線を浴びることになるので大変危険なのです。
プルトニウム239の微粉末なども、吸い込んだときに肺に沈着するので肺ガンの確率が高くなります。
まず、8000ベクレル以上は危険で、8000ベクレル以下なら安全だという単純なものでないことは、お分かり頂けると思います。
どこかに線引きをする、ということで、通常は危険なレベルに一定の安全率やマージンを見込んで線引きしているので、7999ベクレルは安全ということではありません。
計測できる数値での基準、ということで、放射性物質を問わず8000ベクレルとしているのだと思いますが、人間への影響は物質によって大きく違います。
体内に取り込まれても、すぐに排出されてしまう物質と、臓器の中に長期間滞留する物質では、同じベクレル数でも影響が違いますし、その放射性物質の「半減期」によっても変わります。
体内に30日留まっても、半減期が数時間であれば、影響は小さくなります。
土壌ということであれば、半減期の短いものは既に減衰していると思いますので、比較的半減期の長いものは体内滞留中の減衰はあまり期待できません。
そういう「違い」を認識した上で、8000ベクレルが、どの程度の量かを認識しておけば、ある程度の自己判断ができると思います。
一般に言われているのは、人間の体内には、自然放射能として、カリウム40、炭素14などの放射性物質があり、体重60kgの人で約6500ベクレル程度と言われています。
つまり、8000ベクレル/kgの土壌1kgと同じ程度の放射性物質を、あなた自身も体内に持っているということなのです。
だから安全、その程度なら無視してよい、というわけではありませんが、一つの目安になると思いますね。
手で触れる程度なら、それほど神経質になる必要はありませんが、ただ、やはり体内に留まって、内部被ばくするのは避けることです。
マスクなどをして、不要に吸い込まないようにすることが大切です。
関東圏に降り注ぐ放射能濃度は、深刻な状況に陥っています!