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田舎暮らしに付きまとう「リスク」とは?

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田舎暮らしに付きまとう「リスク」とは?

 生活環境に介入してくる「鳥獣」と「虫」の対策には費用が掛かりますし、都会暮らしのあなたには耐えられないはずです!!

※AERA 2018年10月8日号より抜粋

家賃1万円でもネズミ駆除に15万円 地方移住者の失敗談

   田舎暮らしに憧れて軽い気持ちで都会から移住したものの、現実は甘くはなかった。実際に移住の厳しさを実感した人に体験談を聞いた。

 大阪に住む堀井みきさん(30)は2年前、愛媛への移住を決めた。前の住人が引っ越した空き家があると紹介されたのだ。家賃は破格の1万円。

 当時、節約ネタでブログを書き、その収入で暮らしていた堀井さんは、いわゆる「ミニマリスト」を満喫していた。

 洗濯機も冷蔵庫も持たない暮らしに不自由はなかったし、パソコンさえあれば仕事もできる。

 自給自足に憧れていたし、虫だって平気なほう。

 田舎暮らしは自分に向いているに違いない。下見もしないまま、紹介された1カ月後には現地に乗り込んだ。

 到着したニュー我が家は、想像以上の惨状だった。

 ふすまは破れ、畳はえぐれている。いたるところに埃(ほこり)があり、ハウスダストのアレルギーがある堀井さんは、体調を崩した。

 気を取り直し、DIYで壁紙を張り替え、ペンキを塗り、自分好みの家に変えようと努力したが、ペンキにローラーなど道具と費用が増える一方だった。

 揚げ句の果てには家の中で巨大ネズミと遭遇。開封していない食料も片っぱしからネズミにかじられていた。

 駆除業者を呼んで見積もりしてもらうと、所要期間は半年、費用は15万円と言われた。これでは家賃がいくら安くても、まったく節約にならない。移住生活わずか3カ月。大阪に戻ることを決めた。

「自然を楽しむのはパートタイムでいい。インフラが整った都会の生活って最高です。現実を知り、老後に田舎でスローライフを、なんていう夢は見なくなりました」

 憧れの古民家暮らしにも、意外な落とし穴は多い。

 岩手県にUターン移住し念願の古民家を借りた30代の女性も想定外の事態に見舞われた。

 引っ越してみると、前住民が給湯器の水抜きをし忘れていて、管が破裂して使えなくなっていたのだ。

 賃貸契約後に水道が開栓になるため、事前には知る由もなかった。

 家賃のほかに別途30万円かかることになり、交渉して大家に払ってもらったが、給湯器がない間1カ月半ほど銭湯に通うことに。

「1年前に人が住んでいたと聞き、設備は大丈夫と思ってしまった。これから防寒対策にもいろいろかかりそう。この地域の冬をなめていました」

 移住の失敗の原因は住居だけではない。新たな場所で居場所をつくろうとするとき、ぶち当たるのが人間関係の難しさだ。

 若い世代の移住の選択肢として人気なのが「地域おこし協力隊」。国の地方創生事業のひとつで、2017年度は4800人を超える隊員が全国985の市町村で活動した。

 野村明祥(あきよし)さん(25)は、福島県伊達市の地域おこし協力隊(伊達市では地域おこし支援員と呼ぶ)として17年春に赴任。

 学生時代から同市にボランティアとして何度も通っていた。「また来てくれたの?」と声をかけてくれる人たちの温かさに触れ、就職活動をやめて移住を決めた。

 だが、“ボランティア”と“移住者”に対する地域の目は異なることを実感する。赴任後まもなく、公衆浴場に行ったときのことだ。

 脱衣所で胸に下げた協力隊のネームホルダーを見た男性から唐突に声をかけられた。

「なんだおめぇ、地域おこし協力隊か? 俺はおめぇらは嫌いだ」

 ショックだった。同市では野村さんの前にも20人以上の隊員が活動していた。過去の隊員への評価はまちまち。多額の税金が投入されていることもあり、歓迎されるばかりではないのが現実だった。

「協力隊に対する考え方は人それぞれです。協力隊の看板ではなく、野村という一人の人間として見てもらえるように、関係性をつくっていかなければ、と痛感しました」

 今では当の男性からも、「お前はひと味違うな」と言ってもらえるようになったという。

 同じく協力隊として中部地方の山間部の村に赴任した20代の男性は、こんな経験を語る。

 東京近郊の出身で、田舎暮らしには憧れがあった。

 協力隊の任期の上限である3年を過ごすつもりで移り住んだが、結局1年で引き揚げることに決めた。原因は自分のやりたいこととのミスマッチだ。

 もともと起業支援に関心があった男性。

 「フリーミッション」という自分で業務を決めて取り組める枠で採用された。だが首長の交代で方針が変わり、実際は役場の仕事を任されてばかり。

 さらに体育会出身の若者だからと期待され、地域の消防団の活動に参加することに。

 大会前には週5でハードな練習。地域の人の期待に応えなければという思いがあり、強く主張したり断ったりもできなかったという。

 田舎の人間関係については、家に勝手に近所の人が上がりこんで洗濯物を取り込んだりお茶をしていたりという話も聞くが、男性の場合は逆だった。

 住んだ地域は人家が集まる集落。

イラスト:飛田冬子© Asahi Shimbun Publications Inc. 提供 イラスト:飛田冬子

「初めは野菜をもらったりすることもありましたが、ほとんど近隣の人との交流もなくなり、今では都会で暮らしているのとなんら変わりません」

以上

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