子供が遊ぶ公園で
福島市役所から車で5分ほどの場所にある公園で放射能汚染調査を開始しましたが、公園を調査対象にしたのは理由があります。
福島県は国の安全基準である3・8マイクロシーベルト/時を上回る放射線量が計測されたとして、一昨年の4月24日、県内の5つの公園に「1日1時間以内」の利用制限を出しました。
その後の調査で基準値を下回ったとして、すべての公園で利用制限が解除されたのが、一昨年の6月6日でした。
3・8マイクロシーベルト/時という数値は年間20ミリシーベルトの高い被曝限度を前提に算出されており、適切とはいえません。
本来は利用制限どころの騒ぎではないんです。
子供の健康に直結しますので、公園は厳しくチェックすべきなのです!
調査チームは、公園の隅に盛られた土の塊やトイレの裏の排水路など、数値が高いと予想される場所を調査しています。
使用している測定器はチェコ製で、価格は日本円で約120万円の高性能の放射線検知器です。
放射線の総量測定に加え、放射性物質の核種も特定することができるという優れものなのです。
盛り土の計測値は6・3マイクロシーベルト/時(以下、測定値はすべて/時)でした。
国の目安の1・7倍!
数値の大きさに緊張が走る!
公園の隅にあった枯れ葉の塊からも、4・2マイクロシーベルトを計測した!
本来、汚染された枯れ葉はドラム缶などに詰めて20年、30年と管理しなければなりません。焼却処分は放射性物質が広がるので論外です。
こうして放置された枯れ葉が風で舞い散ると、汚染が拡大することになります。
さらに深刻な測定値が続きます。
トイレ裏の雑草が生えている地面は9・1マイクロシーベルト、トイレ入り口の排水路付近に至っては12・5マイクロシーベルトを計測しました。
小さい子供は、土や葉っぱが積み上がった場所に引き寄せられるように行きますし、水たまりで遊ぶのも好きですから、枯れ葉や水まわりで高い数値が出たのは関係者にとりましては大
変にショックな事なのです。
国や行政が安全だと言い張っても、もう公園で遊ばせる気にはなりません!
もう一つ、調査チームが重視したのは、この公園で検出された核種だった。
セシウム134、セシウム137に加え、コバルト60が検出されたことを、測定器は示していたからだ!
コバルト60は自然界に存在しない人工の放射性物質で、半減期が5・3年と長いし、60km離れた福島市で検出されたことは、原子炉のメルトダウンによって一定量のコバルト60が放出
されたことを証明する重大な事実です!
調査チームは初夏を感じさせる暑さのなか、揃いのジャンパーに長靴、防護マスク姿で放射線測定器を持ち歩いている。
肌の色の違う男女の集団は、閑静な住宅地の公園ではかなり異様に映ります。
そのため、調査チームが公園にいる間は、一般人は近寄ろうとしません。
ところが調査が終わると、公園で母親に連れられた幼児が、すぐにブランコで遊び始めました。母子は、自分のすぐそばにホットスポットがあることを、もちろん知らないからなのです!
福島県内の学校では、汚染された校庭の表土除去が始まっているが、福島市は対応が遅かったし、調査に同行した保護者によると、福島県の対応に失望して他県へ転出した家族も多
い。
この日、渡利中でも校庭の表土を削る作業が行われていた。作業員によると、削り取った土は敷地内に穴を掘って埋め、仮置きしている。
校庭の周囲にブルーシートが張られているのは、近隣住民から苦情が出たからだ。しかし、放射性物質の拡散を防ぐのにブルーシートが万全でないのは言うまでもない。
年間240ミリシーベルト
チームが調査を始めようとする、まさにその時だった。
一人の年配男性がやってきて、いきなり抗議を始めた。
「あんたたち、もうやめてくれないか!」
「数値を測られるのが嫌だという住民もいるんだ!」
「ギャーギャー騒ぎ立てるなというのが本心だよ!」
「私は医者だが、この地域は住んでも問題ないと思っている! 」
「子供?」
「それだって、危険を証明するデータなんてないだろう!」
そうまくし立て、去っていった!
この男性を責めることはできない!
放放射能に生活を脅かされているのは、彼とて同じことだからだ!
しかし、政府が「健康被害より風評被害」を強調してきたことで、国民が健康被害を過小評価している現実がある。
特に子供や妊婦に関しては、周囲も含めて危険性を認識することが必要不可欠となる。
土壌の除染が始まるより前、独自に調べたところ、なんと駐車場そばの倉庫周辺の土は360マイクロシーベルトを記録していた。
今回、除染が済んだ土に測定器を近づけると、それでも45マイクロシーベルトを表示していた!
基準値の約12倍!
国の計算では、年間に240ミリシーベルトを浴びる量なのだ!
福島第一原発の最前線で働く作業員の被曝限度(250ミリ)に近い線量である!
校庭の土を除染する横で、いつも通り授業をしている!
どう考えても矛盾しているでしょう!
でもこれが、国と行政の対応なんです!
すべてが場当たり的で、長期的な展望がない!
今いちばん必要なのは、子供たちを安全な場所に避難させることなんです!
チームは次の調査に移った。渡利中学校から約200m離れた私立保育園「こどものいえ そらまめ」の通園路の測定だ。
「歩道の線量を測っていく。泥や落ち葉が蓄積した側溝で線量が高くなる傾向があるので、重点的に調べると側溝は平均で約2マイクロシーベルトだった。」
とグリーンピースのスタッフが言う。
しかし忘れてはならない。
本来、住宅地の線量は0・1以下だ。
連日のように福島の「高レベル汚染」が報道され、私たちの感覚も徐々にマヒしている。
国が定めた3・8マイクロシーベルトという基準は、けっして「安全」を意味していない。
これは、「子供の安全に責任を持てない」年間20ミリシーベルトから算出された、まやかしの安全基準なのだ!
保育園が近づいてくる。正門が見えるあたりに剣道場がある。
その周辺を調べ始めた時、測定器の示す数値が突如上昇を始めた。
2・6、5・4、8・1、11・0、14・2、17・7・・・。勢いよくデジタル表示が更新されていく。最終的には19・6マイクロシーベルトを記録した!
そこはちょうど、雨どいから水が流れ落ちる場所だった!
一般的に汚染度が高いのは、植物の生えているところ、土がむき出しの地面、コンクリートやアスファルトの順番です。
そしてもっとも危険なのが、雨どいの排水口の下なのです。
それが溝などに繋がっていればまだマシですが、地面に垂れ流しになっていると危ない。
屋根に降り積もった放射性物質が雨で流され、排水口の下にたまるんです。そこが土の地面だったり、植物が生えていたりすれば、数値はより高くなります。
だが、福島の人々は、その事実をほとんど知りません!
そう福島県民は、モルモットにされていることすら知らないのです!
こんなことをいつまで続けるつもりだろうか!