統一協会(世界平和統一家庭連合)の問題に関し、宗教法人の解散命令制度について言及されることが増えてきました。
1 宗教法人法81条の解散命令制度
解散命令制度は、宗教法人法81条に根拠があります。
(解散命令)
第八十一条 裁判所は、宗教法人について左の各号の一に該当する事由があると認めたときは、所轄庁、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、その解散を命ずることができる。
一 法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと。
二 第二条に規定する宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をしたこと又は一年以上にわたつてその目的のための行為をしないこと。
三 当該宗教法人が第二条第一号に掲げる宗教団体である場合には、礼拝の施設が滅失し、やむを得ない事由がないのにその滅失後二年以上にわたつてその施設を備えないこと。
四 一年以上にわたつて代表役員及びその代務者を欠いていること。
五 第十四条第一項又は第三十九条第一項の規定による認証に関する認証書を交付した日から一年を経過している場合において、当該宗教法人について第十四条第一項第一号又は第三十九条第一項第三号に掲げる要件を欠いていることが判明したこと。
(以下略)
利害関係人や所轄庁(文部科学省)などの請求によって、裁判所が解散を相当と認めた場合に、強制的に宗教法人を解散させ、法人格を剥奪するという制度になります。
「利害関係人」には、「宗教法人の存続に利害関係を有するもの」と解されており、その宗教法人の包括宗教法人、債権者、債務者は当然ですが、「信者」も含まれるとしています(大阪高決昭和38年6月10日下級民集14巻6号1127頁)。
宗教団体に損害賠償の権利を有する者も「債権者」となりますから、例えば、統一協会に対し、霊感商法被害等で損害賠償請求を行い、裁判所がこれを認容した場合などは、その損害賠償債権者も利害関係人に該当することとなります。
「法令」とは、宗教法人法に限らず、あらゆる法律、命令を指すものとされています。
2 適用例
「著しく公共の福祉を害する」ものと裁判所が認めた例として、サリン事件等を起こした宗教法人オウム真理教に対する解散命令(最決平成8年1月30日で特別抗告棄却)、霊視商法を行った宗教法人明覚寺に対する解散命令があります。
後者については、平成13年の宗教法人審議会で報告がなされています。
文化庁宗務課長(当時)の報告を引用します。
宗教法人「明覚寺」の解散命令請求の状況についてでございます。
この宗教法人「明覚寺」と申しますのは、和歌山県に主たる事務所を持っておりました、単立の宗教法人でございますが、この明覚寺系列の名古屋別院であります満願寺というところを中心といたしまして、全国にわたって霊視商法詐欺事件を行ったということで、これまでに代表役員らを含む11人が詐欺罪で起訴されて、既に8名に有罪判決が出されて確定していると。
ただ、現代表役員、それから前代表役員ら中心人物3名は、現在控訴をしておりまして、名古屋高裁で審理中という状況の事案でございます。
民事の関係につきましては、既に平成11年4月の時点で、明覚寺側は和解金約11億円を支払いまして、被害者等とはすべて和解が成立しているということで、民事上の争いはない状況になってございます。
この法人につきましては、現代表役員の西川らは、まだ控訴をして争っているわけではございますけれども、平成11年7月の地裁段階の判決におきまして、多数の明覚寺所属の僧侶らによって、組織的・計画的かつ継続的に実行された大規模な詐欺事案と認定されていること。
さらに、同判決の中で、宗教法人が宗教活動の名のもとに組織を挙げて行った大規模な詐欺事案として全国的に強い関心を呼び、宗教活動や宗教法人のあり方などを改めて問い直す契機となるなど、
社会に与えた影響も大きいといった指摘もなされているということを踏まえまして、文化庁では解散命令を請求する事由に該当するということから、平成11年12月16日に解散命令の請求、申立てを和歌山地方裁判所に行ったわけでございます。
統一協会(世界平和統一家庭連合)の扱いについても、明覚寺の事例は参考となるのではないでしょうか。